子どもも大人も、誰もが手軽に楽しめる遊びといえば、ジャンケンが思い浮かぶのではないでしょうか。

中国が発祥地とされるジャンケンは、長い年月の中で形を変え、様々な派生ジャンケンが世界各地で楽しまれています。

そして、ここ熊本県人吉球磨エリアには、なんと“世界一難しい”と語られる「球磨拳(くまけん)」というジャンケン遊びがあります。

今回はそんな球磨拳について徹底解説していきます!

目次

  1. 球磨拳ってなに?
  2. 球磨拳の歴史
  3. 球磨拳の具体的なルール
  4. 球磨拳と“焼酎”のつながり
  5. 球磨拳が一番強い人を決める「球磨拳世界大会」
  6. 球磨拳で遊んでみよう!

球磨拳ってなに?

球磨拳(くまけん)は、熊本県南部の人吉球磨地域を中心に、古くから親しまれているジャンケン遊びの一種です。

一般的なジャンケンはグー、チョキ、パーの3種類の形を出し合って勝負しますが、球磨拳では数字の0から5までの計6つの手の形をお互いに出し合い勝負するという、より複雑で難易度の高いジャンケン遊びです。

さらに、勝負に勝つためには相手よりも1つ上の数字を2回連続で出さなければならないというルールも厄介で、このことから球磨拳は「世界一難しいジャンケン」と呼ばれることもあります。

そんな球磨拳ですが、実は全国的に希少な無形文化財の一種であり、球磨郡多良木町では「多良木町指定文化財」としても認定されている、貴重な伝統文化です。

発祥の地である人吉球磨地域では現在、球磨拳の保存と普及のために、様々な取り組みが行われています。

球磨拳の歴史

http://taragitararira.com/archives/1596

球磨拳の起源は、江戸時代にあると考えられています。

江戸時代には参勤交代という制度がありました。これは、各地の大名に対して、既定の期間ごとに江戸と自領地を交互に滞在することを義務付けた制度です。

当然江戸時代には車が存在せず、また道も整備されていなかったため、武士たちは徒歩で江戸を往復しなければいけませんでした。もちろん、九州の大名も歩いて江戸に向かいます。

この長く辛い参勤交代の時間に、少しでも気を紛らわすために考えられたのが、ジャンケン遊びである球磨拳になります。

「球磨拳はじゃんけんのルーツ」という説もあるようですが、それに関しては定かではありません。

球磨拳の具体的なルール

球磨拳は地域や年代によって異なるルールが存在するため、ここでは一般的に知られている基本的なルールをご紹介します。

ルールは下記の通りです。(手の形は画像を参照してください)

  • 1対1の、2人対戦(団体戦もあるが、試合自体は1対1が基本)
  • 「ひい」「ふう」「さん」のかけ声で0から5までのどれか一つを片手で作って出し合い、数が一つ多いものが勝ちとなる(ただし、0は5に勝つ)
  • 2回連続で勝った方が拳棒を1本取る
  • 同じ相手と連続で試合を行い、最終的に獲得した拳棒が多い方が正式な勝利となる

0から5の形はこのように作ります。

動画でもご覧ください。(だいぶ早いですが、慣れればついていけるようになると思います笑)

 

もう少し解説すると、

👉(2)は👍(1)に勝ちます。
👌(3)は👉(2)に勝ちます。

ただし、
(0)は🖐️(5)に勝ちます。

👍(1)と👌(3)、(0)と👉(2)などの戦いは、数字が2つ以上離れているため、勝敗が付きません。言い換えれば「あいこ」ということになり、勝負は続行します。

人吉球磨では、負けた方がお酒を飲むというルールも、、、

また、人吉球磨では、相手に拳棒を取られてしまった方はおちょこ(猪口、チョクともいいます)一杯の焼酎を飲まなければいけないというルールも存在します。

負ける度に一杯飲まなければいけないため、負け続けると酔いが回って大変なことに。。。

地域独自のルールではありますが、お酒の場でも楽しめる遊びということで、老若男女問わず多くの地元民から親しまれているジャンケン遊びです。

球磨拳と“焼酎”のつながり

球磨拳を理解する上で忘れてはいけないのが、「球磨拳と“焼酎”とのつながり」です。

ルール解説の最後に「負けたらおちょこ一杯の焼酎を飲まなければいけない」と記載しましたが、それくらい地元では球磨拳と焼酎は切っても切り離せない存在だと考えられています。

こう考えられている一番の理由は、人吉球磨が世界的に有名な焼酎「球磨焼酎」の産地であるということが大きいでしょう。

球磨焼酎は全国的にも珍しい米焼酎であり、さらに日本に4つしかない産地呼称が認められた本格焼酎のブランドでもあります。

球磨焼酎は地域を代表する産品の一つです。そんな球磨焼酎をさらに楽しみたいという想いがあったからこそ、現代でも球磨拳が受け継がれているのかもしれませんね。

球磨拳が一番強い人を決める「球磨拳世界大会」

人吉球磨地域を中心に様々な地域で楽しまれている球磨拳ですが、なんとそんな球磨拳のNo.1を決める闘い「球磨拳世界大会」が、毎年球磨郡多良木町で開催されています!

コロナウイルスの影響で一時期は開催が中止となっていましたが、2024年2月から晴れて再開することとなりました。

地域内外からたくさんの球磨拳の猛者が集まり、熱い闘いが繰り広げられる球磨拳世界大会。また、大会は「一般の部」と「初心者の部」の2部門に分けられていて、「初心者の部」では練習の時間が設けられているため、球磨拳初心者や未経験者の方も楽しめる内容となっています。

ぜひこの機会に、伝統文化「球磨拳」を体験してみましょう!

※大会の詳細情報は、球磨拳世界大会公式インスタグラムで随時発信しています。ぜひこちらもご覧ください。

球磨拳世界大会インスタグラム

球磨拳で遊んでみよう!

今回は人吉球磨の貴重な伝統文化「球磨拳」についてご紹介しました。

世界一むずかしいジャンケンと言われることがある球磨拳ですので、初めての方は慣れるのに少し苦戦するかもしれませんが、その分ジャンケンよりも奥が深い闘いが楽しめるので、とても楽しいです!

ぜひみなさんも、球磨拳で遊んでみてください!