日本の文化の1つ、伝統工芸。デザイン、耐久性、実用性、全てが高いクオリティで表現されており、このような工芸品を生み出せる日本の技術力は世界に誇ります。職人のこだわりが詰まった伝統工芸品は、1つ持っているだけで所有欲を大いに満たしてくれます。

今回は、日本が誇る伝統工芸品の良さ、魅力、素晴らしさについて、徹底解剖していきます。

目次

  1. 伝統工芸とは何を指すか
  2. 世界に誇る日本の伝統工芸の良さ、魅力
  3. 伝統工芸品が抱える課題点について
  4. 日本の代表的な伝統工芸品を紹介
  5. 伝統工芸品を通して地域を好きに

伝統工芸とは何を指すか

まず初めに、伝統工芸とは何かについて解説していきます。

伝統工芸品とは、日本のこれまでの歴史の中で長い間受け継がれてきた、日常生活で使用する道具のことを指します。現在はアートの1つとして認識されることも多くなってきた日本の伝統工芸品ですが、本来は生活の中で使われてきたものがほとんどです。

100年以上の歴史を持つものが多く、古いものだと1000年以上昔まで起源を遡るものまであり、日本全国に約1300種類あると言われています。

また、伝統工芸品の中でも一定の基準を満たし、経済産業大臣の指定を受けたものを「伝統工芸品」と呼びます。「伝統的工芸品」は、1974年に制定・施行された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」によって、以下のように定義されています。

・主として日常生活の用に供されるものである
・その製造過程の主要部分が手工業的である

・伝統的な技術又は技法により製造されるものである

・伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものである

・一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものである

伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)

以上の基準を満たした「伝統的工芸品」は、2022年3月時点で、237品目あります。

世界に誇る日本の伝統工芸の良さ、魅力

伝統工芸品の良さ、魅力は以下のようなものが挙げられます。

  • 日本の文化・歴史を感じられる
  • 1つひとつに個性がある
  • 経年変化を楽しめる

日本の文化・歴史を感じられる

伝統工芸品には長い歴史があり、それぞれ作られてきた場所の歴史や文化と密接なつながりがあります。現在は生活様式が変化していますが、もともとは生活の中で使われていたものであることから、当時の生活を感じられることが魅力です。

また、伝統工芸品をきっかけにその土地の歴史を学ぶことにもつながるため、作られた土地への愛着も湧きやすくなります。

1つひとつに個性がある

伝統工芸品は主に手作業で作られているため、1つとして全く同じものはありません。手作業ならではの個性が特別感を演出します。

模様や形が少しずつ異なるため、自分好みの品との出会いを探すのも醍醐味の1つです。

経年変化を楽しめる

現代の日用品は消耗や劣化によって買い替えることが多いですが、伝統工芸品は経年変化を楽しむことができます。素材や工法にこだわって作られた伝統工芸品は使うほどに味が出て魅力的になったり、馴染んで使いやすくなったりします

また、伝統工芸品は破損した場合でも修復することによってさらに別の魅力が生まれることすらあります。

割れてしまった焼き物を例に挙げると、「金継ぎ」という技術で漆を塗ってつなぎ合わせ、その上に金箔や銀箔を貼る方法があります。これによって、再び使えるようになるだけでなく、新たなデザインを楽しむことができます。

長く使い続けられるという特徴からは、”物を大切にする”という、日本人の素敵な文化が感じられますね。

伝統工芸品が抱える課題点について

多くの魅力が詰まっている一方で、伝統工芸品は以下のような課題も抱えています。

  • 古いものというイメージ認知される
  • 機会が少ない
  • 通常の日用品と比べて高額

“古いもの”というイメージ

「伝統的」と聞いて、古くさいイメージを持たれる方もいます。最新のものや現代風のものを求める人にとっては、魅力が伝わりきっていないのが現状です。

しかし、最近では現代の生活に合わせた伝統工芸品が作られたり、現代技術とのコラボが行われたりと、進化を続けています。こうした動きによって「伝統=堅い、とっつきにくい」というイメージからの脱却や、若い世代への普及効果が期待できます。

伝統工芸と現代技術のコラボの例としては、以下の記事で紹介しているイベントが挙げられます。

侍う-SABURAU-

認知される機会が少ない

そもそも日常生活において伝統工芸と接する機会は多くありません

1つひとつ手作業で作られるという特性上、大量生産はされないため、百貨店やデパートなどの一部店舗以外で目にすることは少ないです。伝統工芸品について知ろうとする人も少ないため、認知の機会は限られてしまいます。

一方で、最近ではWebやSNSを活用した伝統工芸のプロモーション活動が盛んに行われるようになってきており、こうした活動によって認知拡大が望まれています。

通常の日用品と比べて高額

伝統工芸品は職人が素材や工法にこだわって手作業で作っているため、一般的な日用品と比べると高額である点は、購入する上で1つのハードルとなっています。

しかし、先ほど紹介したように伝統工芸品を使用することで他にはない特別感を得ることができ、さらに日本の文化や歴史を感じることもできます。また耐久性が高いため、一時的な出費は大きいですがその分長く楽しめるという見方もできます。

日本の代表的な伝統工芸品を紹介

最後に日本の伝統工芸品の一部をご紹介します。

  • 陶磁器
  • 漆器
  • 和紙
  • 染物
  • 日本刀
  • 金工品
  • ガラス工芸品

陶磁器

https://toki-minoyaki.jp/product/product59 

陶磁器は陶器と磁器の総称で土や石をこねて焼いた器で、「焼きもの」とも呼ばれています。日本で室町時代から安土桃山時代にかけて茶の湯の文化が流行したことをきっかけに発展しました。高い耐久性や手触りの良さが魅力で、デザイン性にも富んでいます。

石川県の九谷焼、岐阜県の美濃焼、京都府の清水焼、滋賀県の信楽焼、佐賀県の有田焼などが代表的です。

漆器

https://www.tohoku.meti.go.jp/s_cyusyo/densan-ver3/html/item/fukusima_01.htm

独特の美しい光沢が特徴的な漆器は漆を何度も重ねて塗って作られます。耐久性・耐水性・断熱性・抗菌作用に優れ、使い込むとさらに光沢が出ます。漆器は欠けた場合も上から漆を塗ることで修復が可能です。

福島県会津若松市の会津塗り、富山県の高岡漆器、石川県の輪島塗や山中漆器、福井県鯖江市の越前漆器などが代表的です。

和紙

https://hosokawashi.jp/about-hosokawa-shi/ 

和紙は耐久性が高く、古くから日本で扇子やうちわなど様々な製品に使われてきました。ミツマタやコウゾ、ガンピなどの皮が原料で、原料や水質によって質感が異なります。

長年受け継がれてきた高度な「手漉(てすき)和紙技術」によって、埼玉県小川町の東秩父村細川紙、岐阜県美濃市の本美濃紙、島根県浜田市の石州半紙がユネスコ無形文化遺産に登録されています。

本サイトでご紹介している槻木集落でも、ミツマタを原料に和紙が作られています。

みつまたから作られる和紙

染物

http://www.kagayuzen.or.jp/know/ 

染物は布を織った後の織物を染めたもので、型染め、友禅染め、絞り染め、ろうけつ染めなど、様々な染めの技法があります。江戸小紋、加賀友禅、京鹿の子絞などが代表的です。

高級な着物のイメージが強い染物ですが、最近ではTシャツやスカーフ、手ぬぐいなどにも使われているため、目にする機会が増えています。

日本刀

日本刀は古くから主要な武器として使われていましたが、現在では美術品や文化財として注目されています。美しい見た目と丈夫さ、鋭い切れ味が魅力です。

原材料が「玉鋼」と呼ばれる鉄の塊であることと、「鍛錬」と呼ばれる職人によって鉄を打ち付ける工程を経ていること、の2つの条件が必要になります。

近年ではアニメやマンガ、ゲームをきっかけに、日本刀が注目される機会も多くなっています。

金工品

https://moriginki.co.jp/tokyoginki/ 

金工品は金属を加工して作られる工芸品です。岩手県の南部鉄器や山形県の山形鋳物が有名で、鉄分を取れる素材であることでも知られています。

「金」では石川県の金沢金庫「銀」では1979年に伝統的工芸品に指定された東京銀器があります。

ガラス工芸品

ガラス工芸は「吹きガラス」「カットガラス」の2つに分けられます。吹きガラスでは、青森県の津軽びいどろ、佐賀県の肥前びいどろ、廃瓶を再利用して美しい工芸にする、沖縄県の琉球ガラスが代表的です。

東京の江戸切子、大阪府の天満切子、そして鹿児島県の薩摩切子なども人気のガラス工芸品です。

伝統工芸品を通して地域を好きに

今回は伝統工芸品の魅力や課題について解説しました。

日本の文化や歴史、高度な技術が詰まった伝統工芸品は、その地域を知ることや愛着が湧くことにもつながります。地域の文化や歴史に親しみを持つきっかけとして伝統工芸品に注目してみてはいかがでしょうか。

伝統工芸品をはじめとする、地域を代表する特産品は町を盛り上げる役割も期待できます。特産品についてさらに知りたい方は以下の記事もご覧ください。

特産品とは