新しくお米作りを始めた方や農業体験の一環としてお米作りに挑戦しようと考えている方には、ぜひ稲刈りの工程では「稲架掛け(はさがけ)」と呼ばれる方法にチャレンジしていただきたいと思っています。
稲架掛けは、現代の便利な農業機械が普及する前に行われていた、機械を使わずに行う稲穂の乾燥方法です。稲架掛けは時間と労力がかかるとても大変な作業ですが、短時間で手軽に乾燥させたお米よりも断然美味しいと感じる人が多くいます。
本記事では、稲架掛けを行うメリットや魅力、稲架掛けのやり方などを解説していきます。
稲架掛けってなに?
稲架掛けは、木や竹を使って組み立てた稲架(物干しざおのような木組み)に刈り取った稲穂を掛けていき、太陽の光を使ってもみを乾燥させる乾燥方法です。読み方は「はさがけ」で、数百年前から行われてきた、歴史あるお米の乾燥方法です。
現在は便利な農業機械が多く開発されており、乾燥工程も乾燥機を用いることで短時間かつ手軽に行えるようになりました。一方、稲架掛けは多くの工程を手作業で行う必要があり、時間と労力がかかる作業になります。
機械を使わない稲架掛けは、稲刈りシーズンである9月の高い気温も相まって、非常に大変です。ただ、この大変な稲架掛けによってお米を乾燥させることで得られるメリットはたくさんあるため、今もなお乾燥方法に稲架掛けを採用しているお米農家さんは一定数いらっしゃいます。
ここからは、現代でも稲架掛けが取り入れられている理由や稲架掛けのメリット、魅力ついて詳しく解説していきます。
本当に美味しくなる!稲架掛けの魅力3選
ここでは、稲架掛けを行うメリットや魅力を大きく3つに分けてご紹介していきます。一つずつ見ていきましょう。
後熟とアミノ酸の増加で美味しくなる
お米は、長い期間をかけてじっくりと乾燥させることで「後熟」と「アミノ酸の増加」の2つの反応が発生し、お米の美味しさがより引き出されると言われています。
後熟とは、収穫した作物を数日間放置することで呼吸による化学変化を起こさせる方法のことをいいます。お米を後熟させるとうま味と香りが向上し、より美味しく感じられるようになります。
また、作物は乾燥させることでうま味成分のもとであるアミノ酸が増加することもわかっています。お米も同じくアミノ酸が増加するため、じっくりと長い期間を掛けて乾燥させることで、うま味成分を感じやすくなるのです。
当サイトではすべてを稲架掛けによって乾燥させて生産しているブランド米「つきぎ米」を販売しています。稲架掛けでどれだけ美味しくなるのかが気になっている方は、ぜひ一度試してみてください。
粒の変質や損傷を防ぐことができる
高温で勢いよく乾燥させる機械乾燥では、急激な温度変化や激しく加えられる刺激により、粒の形が変形してしまったり、また本来の味が損なわれてしまったりする問題が指摘されています。
どれだけ上手にお米を栽培、収穫したとしても、乾燥工程で損傷を与えてしまったら意味がありません。また、商品として販売する場合は、粒をふるいにかけ、整った形のものだけを販売する農家の方もいらっしゃいます。この場合、欠けている粒は商品にすることができないためその分ロスが多くなってしまいます。
省エネルギーでお金&環境にやさしい
機械を使用しない稲架掛けでは、当然ですが電気やガスを使用しません。そのため、その分の費用を抑えられるのと同時に、環境被害を抑えることにも繋がります。
環境問題は一人では決して改善できるものではありませんが、SDGsの視点が広まる現代において、環境被害の少ない方法を採用するのはとても素晴らしいことです。
稲架掛けのやり方を解説します!
それでは、ここからは稲架掛けの具体的なやり方を解説していきます。
初めて稲架掛けをやる方で、しかも周りにも経験者がいないという場合は、今回ご紹介する稲架掛けは難しいと感じるかもしれません。可能であれば、お米作り経験者の方にサポートしてもらいながら挑戦してみることをおすすめします。
稲架掛けのやり方は以下の通りです。
稲を刈り取る
まずは稲を収穫しましょう。
いくら手作業の稲架掛けに挑戦すると言っても、稲刈りまで手作業でやってしまうのは非常に大変です。省エネルギーを追求するために手作業での稲刈りに挑戦するのは素晴らしいですが、味に関しては機械で刈っても手で刈っても変わらないので、機械を所有している場合は機械を使うことをおすすめします。
手作業での稲刈りについては以前実際に体験した内容を記事にしているので、こちらをぜひお読みください。稲刈りを手作業で体験してきました!
稲架を組み立てる
稲の刈り取りを終えたら、掛けていく稲架を組み立てていきます。稲架には長くしっかりとした木や竹を使用しますが、最近では鉄パイプを使用する農家の方もいらっしゃいます。持ち合わせていない場合は事前に用意しておく必要があります。
稲架は田んぼの中で立てるのが一般的です。太陽の向きや日当たりを考えながら自分なりにベストだと思う位置に立ててみてください。
なお、稲架は倒れないようにしっかりと組み立てなければ、稲を掛けている途中で重みに耐えきれず崩壊してしまう可能性があります。そうなればまた一からやり直しになってしまうため、稲架掛けの中でこの作業が最も重要であるともいえます。
経験者と一緒に作業する場合は、初めのうちは組み立てをお願いすることをおすすめします。
刈り取った稲を稲架の近くに集める
無事稲架を立てることができたら、刈り取った稲の束を稲架の付近に集めていきます。
稲架掛けは時間のかかる作業です。そのため、効率的に作業を進めることがとても大切になります。
いちいち稲の束を回収しながら稲架掛けを行うのは非効率なので、あらかじめ稲架の付近に束を集めて、掛ける作業を一気に行えるように準備しましょう。
稲を掛けていく
ここで、稲架掛けの醍醐味でもある、稲を掛ける工程に入ります。
稲のかけ方は人によって少しずつ異なるため、本記事では細かなやり方はご紹介しません。掛けた稲が安定していることをしっかりと確認した上で、自分なりのやり方を探りながら掛けていきましょう。
ただ、掛けた稲の上にさらに稲を被せて屋根を作るという工程が最後にあるため、稲を被せやすいように上端を上からポンポンと叩き、平らにしておくようにしましょう。
稲を掛けた稲架にさらに稲を被せて屋根を作る
稲架掛けの最後の工程です。稲架に掛けた稲は長期間屋外で放置するため、雨に降られる可能性は十分にあります。
雨が降ってしまえば稲が濡れてしまうのは避けられませんが、稲架に掛けた稲の上にさらに稲を被せ、雨避けを作ることで稲が濡れてしまうのを最小限に抑えることができます。
稲架にビニール袋をかぶせて保護したり、そもそも屋根を作らず雨ざらしにしたりと、ここでも農家さんによってやり方が変わってくるようですが、費用を掛けずに被害を最小限に抑えられる稲を被せる方法を当サイトではおすすめします。
約2週間放置した後、回収する
稲架掛けした稲は、約2週間を目安に稲架から外し、回収してください。雨の日数によっては3週間程度まで伸ばしても良いでしょう。
稲を回収した後、すぐに脱穀の作業に入ります。ここではご紹介しませんが、脱穀、もみすり、そして精米の工程を経て、食べられる状態へと加工していきます。
稲架掛けで美味しいお米が食べられる!
今回は稲架掛けでお米が美味しくなる理由や稲架掛けのやり方などを解説していきました。
食べ比べてみるとわかりますが、確かに稲架掛けしたお米とそうでないお米は味わいが異なります。しっかりとしたお米の味と豊かな香りが顕著に出ていて、やはりとても美味しいと感じます。
美味しいお米を作るためにも、そして昔ながらの作業を体験するという意味でも、お米作りに興味のある方にはぜひ稲架掛けに挑戦していただきたいと思っています。
稲架掛けによってお米がどれほどおいしくなるのかが気になっている方は、当サイトではすべてを稲架掛けで乾燥させたブランド米「つきぎ米」を販売しているので、ぜひこちらをお試しください。