「東京離れ」という言葉を聞いたことがありますか?東京離れは、その名の通りこれまで東京に住んでいた人が東京以外の地域へと移住・定住することを言います。
政府が少子高齢化対策として「地方創生」を掲げたことにより、東京離れに興味を示す若者は少しずつ増えてきていました。そして、ここ最近でこの勢いが急激に加速をし始めているのです。
本記事では、そんな東京離れの実態を、人口のデータやメリット・デメリットなどの観点から解説していきます!
それでは見ていきましょう!
データで見る「東京離れ」
現在、日本は「東京一極集中」という大きな社会問題を抱えています。少子高齢化によって地方の雇用数は減少傾向にあり、さらに地方にはない魅力的なコンテンツが都内に増え始めていることから、地方在住の若者を中心に都内に移住をするという流れが、ここ十数年の間で続いていました。
しかし、近年そのような東京一極集中の流れが是正され始めているのです。
2020年5月、東京都は都内からの転出者が都外からの転入者を上回る「転出超過」を実現しました。超過した人数としては約1000人ほどと少数ではありますが、その後は2,000人から4,000人程度の転出超過を維持することに成功しました。
東京都の転入超過者数の推移
(-は転出超過者数)
月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
転入超過数(人) | 4,532 | -1,069 | 1,669 | -2,522 | -4,514 | -3,638 | -2,715 | -4,033 |
出所:総務省「住民基本台帳人口移動報告2021年(令和3年)」
さらに、東京都の中でも人口の多い東京23区では、年間を通して14,828人の転出超過を実現することができました。東京23区で転出超過が起きたのは約25年ぶり。人口移動において、歴史的なムーブメントが起きているといえます。
東京23区の年間の転入超過者数の推移
(-は転出超過者数)
年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
転入超過数(人) | 65,654 | 70,490 | 57,082 | 57,010 | 60,909 | 64,176 | 13,034 | -14,828 |
出所:総務省「住民基本台帳人口移動報告2021年(令和3年)」
転出超過が起きた一番の原因は、新型コロナウイルスの影響を受けて雇用や働き方が大きく変化したことであると考えられます。
外出自粛によって飲食店やサービス業の雇用が減少、会社に勤める人はテレワークが導入されたことで出社することなく仕事ができるようになったため、物価が高く、感染の可能性も高い東京に留まる必要性は薄れてきているといえます。
ただし、東京都の転出者数が増加傾向にある一方で、「東京圏」の転出者数はそれほど増加していない、それどころか以前よりも転入者数が増加しているという現状もあります。
東京に隣接する埼玉県、神奈川県、千葉県の転入出者数を見てみると、3県とも2020年よりも2,000人以上、転入超過人数が増加していることがわかります。
東京圏に属する県の年間の転入超過者数の推移
年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
神奈川県 | 14,887 | 17,276 | 16,093 | 17,514 | 23,483 | 29,609 | 29,574 | 31,844 |
埼玉県 | 18,375 | 18,077 | 21,702 | 22,181 | 24,652 | 26,654 | 24,271 | 27,807 |
千葉県 | 6,759 | 8,039 | 13,163 | 12,711 | 11,889 | 9,538 | 14,273 | 16,615 |
出所:総務省「住民基本台帳人口移動報告2021年(令和3年)」
東京都の転入者数が大きく減少していることから、東京に住んでいた人たちは東京圏内の他の県に転出していったということが予想でき、全国的な人口分散には至っていない、つまりは政府が掲げる「地方創生」の実現にはつながっていないということが考えられます。
東京離れのメリット
ここからは、実際に東京を離れることで生活がどのように変化するのかについて解説していきたいと思います。
まずは東京を離れることで得られるメリットについて紹介していきます。メリットは以下の3点。
- 家賃が安い
- 充実した育児を行える
- 自然を活かしたレジャーが身近にある
順番に見ていきましょう。
家賃が安い
一番に挙げられるメリットは、家賃の安さ。賃貸住宅を借りるとなれば、同じ値段でも東京の2倍近い広さの家に住むことができます。
また、そこまで充実した住居環境が必要ではない場合はより家賃が安い物件を選択することで、毎月の固定費を削減することも可能です。
固定費が抑えられれば、生活の自由度はぐっと上がります。地方で生活をすることで、趣味や娯楽などにより多くのお金を費やすことができるでしょう。
充実した育児を行える
近年「待機児童」という言葉を聞く機会が増えました。待機児童とは、共働き世帯の増加や保育士不足などの影響を受けて、保育施設に申請を出しているのにもかかわらず入所することができない児童のことをいいます。この待機児童問題は、都心部を中心に起こっているといいます。
しかし、地方はこの待機児童問題の影響をそこまで受けていません。人気の保育施設でも待機児童は4,5人程度。施設を選ばなければすぐにでも入所を決めることができます。
小さなお子さんを持つ方にとっては、とても魅力的なメリットです。
自然を活かしたレジャーが身近にある
移住する場所にもよりますが、地方には東京よりもレジャー施設が多くあります。海や山、農園から牧場まで、デジタルに溢れる現代だからこそ必要な自然豊かなレジャー施設へ、比較的短時間でアクセスすることができます。
特に、最近だとキャンプに対するニーズが急激に大きくなってきているので、キャンプが好きな人は地方で生活することで休日の趣味を堪能することができます。
東京離れのデメリット
東京を離れることで受けるデメリットは大きく2つ。
- 雇用の数が少ない
- 目的地が自宅から遠いことがよくある
1つずつ見ていきましょう。
雇用の数が少ない
デメリットの1つ目として挙げられるのは、東京都内と比較すると雇用の数が圧倒的に少ないという点。
地方の方が人口が少ないので、当然企業のオフィス数やその他様々な施設の数も減少してしまい、それに伴い働き口も少なくなってしまいます。農業や林業、漁業など都内ではできないような仕事もたくさんありますが、全体的な雇用の数自体は都内の方が勝ります。
やりたい仕事、興味のある仕事が既に決まっている場合は、事前に移住先にその仕事があるかどうかを確認した方がよいでしょう。
目的地が自宅から遠いことがよくある
もう一つのデメリットは、行きたい場所が自宅から遠いケースがよくあるという点。地方の施設の充実度は都内よりも劣ります。
コンビニやスーパーマーケットに行こうと思うと、徒歩で15分から30分、場所によっては1時間近くかけて移動しないとたどり着けないといった地域もあります。
そのため、地方でのメインとなる移動方法は主に自動車での移動です。
自動車を使えば移動時間を大きく短縮させることができますが、自動車の購入費や維持費が必要になります。車好きの方やもともと車を持っていたという方は問題ないと思いますが、そうでない方は別途自動車を所有するための費用を用意しなければいけません。
移住におすすめの地域3選
それでは最後に、東京離れに興味を抱いている方に向けて、地方移住におすすめの3つの地域を紹介していきます。
大都会東京に慣れ親しんでいる人がいきなり自然に囲まれた田舎町に移住をするのは、ハードルが高いといえます。
そこで、今回は自然と都会がバランスよく組み合わさった地域を3つピックアップしました。地方移住の最初の一歩として検討してみてください。
長野県軽井沢町
長野県は住みたい田舎ランキングで毎年上位にあがってくる、人気の地域です。その中でも特に軽井沢町は多くの移住者が訪れている町として有名。東京からのはじめての移住地としては非常におすすめできます。
自然の豊かさや様々なレジャー施設が用意されているなどたくさんの魅力が詰まった軽井沢町ですが、特に魅力的だと感じるのは「飲食店が豊富にあるところ」です。
田舎と聞くと飲食店が少なくて自炊中心の生活というイメージが強いかと思いますが、軽井沢町は飲食店の激戦区として知られているほど、外食施設が豊富にあります。
東京で生活していた時に外食を多く利用していた人にとっては、自炊中心の食事を強いられる地方暮らしはハードルが高いと感じられるかもしれません。しかし、長野県軽井沢町はそういった点において、都会慣れした人に相性の良い地域だといえます。
山梨県中巨摩郡昭和町
山梨県も移住先ランキングで常に上位に位置している、人気の高い地域。そして中でも中巨摩郡昭和町は、都会暮らしに慣れ親しんでいる人でもストレスなく移住を始められる都市であるといわれています。
移住地として人気な理由は、イオンモール甲府昭和やイオンタウン山梨中央などの大型ショッピングモールが設立されているところにあります。
自然が豊富で田舎町のイメージが強い山梨県ですが、昭和町には都会人でも楽しめる商業施設がいくつも用意されているため、都会と田舎のハイブリッドな生活を堪能することができます。
移住をしても都会のような休日を過ごしたい方に、おすすめです。
北海道札幌市
最後に紹介するのは北海道札幌市です。札幌市は観光地としても有名で、人口も190万人を超える都市であるため、東京からの移住としてはハードルが低めであるといえます。
知っての通り北海道は日本で一番寒い地域と言われているため、東京とは異なる暮らしを楽しむことが可能。北海道ならではの食材、料理を楽しむことができますし、冬場は雪を活かしたレジャーを堪能することもできます。
「寒い地域は絶対に無理!」という人には向いていませんが、そうでなければ東京離れを考えている人におすすめな場所といえます。
まとめ
本記事では、近年注目されつつある東京離れについて、その実態やメリット・デメリットなどの観点から解説していきました。また、東京からの移住先としておすすめの地域についても紹介しました。
特に東京23区で20年以上ぶりの転出超過が起きたことは、ライフスタイルの変化や時代の流れを大きく反映している事実であるといえます。
東京離れには良い点も悪い点も含まれているので、自分が望む暮らしの在り方と比較しながら、東京で生活するか、東京を離れて生活するかを決めるとよいでしょう。