シビックプライドという言葉をご存じですか?地方自治体の担当者や地方創生の施策に関係のある方なら聞いたことがあるかもしれませんが、意味まで理解している人は多くはありません。
本記事では、シビックプライドとは何なのかについて、定義や歴史、具体的な施策などの観点から紹介していきます。この記事を読めば、シビックプライドが地方創生にどんな影響を与えるのかを理解することができます。
地方創生に興味がある人、地域活性化の取り組みに従事している人は必見です!
シビックプライドとは?
多くのメディアで紹介されているシビックプライドの意味は、「都市に対する市民の誇り」です。しかし、この文章だけを読んでも「なるほど、そういうことか!」と納得できる人は少ないのではないでしょうか?
シビックプライドの意味をもう少しかみ砕いて説明するために、地元愛や郷土愛といった似た用語と比較しながら見ていきましょう。
地元愛・郷土愛 | 生まれ育った故郷の風土や文化に対して抱く好意的な感情 |
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シビックプライド | 特定の地域を愛し、地域をよりよくするために貢献しようとする心意気 |
より詳細に意味を考えてみると、地元愛・郷土愛とシビックプライドの意味は上記のようにまとめられます。
ここで注目していただきたいのは、地元愛・郷土愛は「生まれ育った地域」への感情であるのに対し、シビックプライドは「特定の地域」に対する感情であるという点。特定の地域というのは、故郷に限らず移住先や自身が関心を寄せている地域なども含み、対象の範囲が広がります。
また、地元愛・郷土愛は単なる「愛」の感情であるのに対し、シビックプライドの意味には「地域に貢献しようとする心意気」が含まれます。シビックプライドの概念には、地域創生に積極的であるかどうかが重要な指標となります。
以上の点を踏まえると、シビックプライドとは「地元に限らず、自身が関心を寄せる地域を誇りに思い、能動的に地域活性化につながる行動に関与しようとする心意気」とまとめることができます。
なぜシビックプライドが注目されているのか
シビックプライドが注目されている背景を知るためには、歴史を紐解いていく必要があります。
起源は、19世紀イギリスにあるといわれています。産業革命真っただ中だったイギリスでは、商工業の発展に伴い多くの都市が生まれました。それまでは王侯貴族や教会が都市の中心として機能していましたが、市民階級が力をつけていったことにより、自分たちで都市を誇りあるものにしようとする動きが活発に行われるようになりました。
その象徴となったのが、市民主導で設立された共同建築や文化施設、公園などですが、このような市民の行動はまさにシビックプライドであるといえます。
当時のイギリスの経済発展には、シビックプライドをもとに都市が形成されていき、シビックプライドが起点となって文化や経済が成熟していったという側面も含まれていると考えられます。地域や国の力を向上させ得るシビックプライドの考え方は、次第にイギリスだけにとどまらず世界中で重要視されるようになりました。
シビックプライドを形成することのメリット
地域の文化や経済の発展に貢献するシビックプライド。では、地域住民のシビックプライドを醸成することで、具体的にどんな利点が得られるのでしょうか?以下ではシビックプライド形成における3つのメリットについて紹介していきます。
少子高齢化の改善につながる
シビックプライドの醸成、すなわち住民の地域に対する愛情・誇りを高めることができれば、他地域に移住、転出してしまう住民の数を減少させることにつながります。そして、住民の転出者数を減少させることは、少子高齢化の改善に直結するといえます。
多くの地域が抱える課題は、地元で育った若い層が、進学や就職のために外部へ転出してしまうことによる人口減少。しかし、シビックプライドを形成させることで若者を地域内にとどめることができれば、人口減少は抑制され、出生数の増加も期待できます。
多くの地域を救う一手となるのが、シビックプライドなのです。
地域サービスが充実し、住みやすくなる
先ほど、シビックプライドは「住民が地域活性化に向けて積極的に行動しようと考えること」と定義しました。つまり、地域内にシビックプライドが浸透することは、地方創生に関するあらゆる施策に対して、地域住民が寛容になると言い換えることができます。
地方創生施策に寛容な住民が増えれば、施策に当てられる資金も増加させることができ、地域内の施設や各種サービスを充実させることにつながります。シビックプライドの醸成を促進させることは、住みやすい街づくりに貢献するのです。
定住者・移住者数の増加につながる
シビックプライドの形成は、少子高齢化の改善だけにとどまらず定住者・移住者数の増加にも寄与します。各種施設やサービスが充実しており、住民に活気があふれる地域は、やはり魅力的に感じます。
特に近年は地方移住のニーズが高まってきているので、このタイミングで住みやすい地域であることをしっかりとアピールできれば、転入者数の増加に大きくつなげられるといえるでしょう。
シビックプライドの形成方法
最後に、シビックプライドを形成する方法について紹介していきます。シビックプライドの形成方法はたくさんあります。地域の特色やリソースを考慮して、地域独自の形成方法を採用することが効果的です。ここではいくつかの例を参考に、シビックプライドの形成手法についてみていきましょう。
地域の魅力を外部に発信する
あなたは自分の地域に誇りを抱いていますか?もし抱いているのならば、どんな部分に誇りを抱いているでしょうか?
多くの場合、誇りは「外部に向けて発信しても価値のある、地域独自の魅力的なもの」に対して抱くはずです。つまり、自治体が主体となって地域の魅力を外部に発信し続けることで、地域の認知度は向上し、そしてそんな地域を住民は誇りに感じるようになるといえます。
幸いにも、近年はSNSや動画配信サービスなど、情報を発信するツールは豊富に普及してきているので、それらを活用して地域の魅力を伝えていきましょう。
各種制度を整備し、ストレスのない地域を目指す
地域内にどれだけユニークな特徴があっても、その地域の住み心地が悪ければ、住民にシビックプライドを醸成させることはできません。高齢の方や小さな子供を持つ家庭など、すべての人が住みやすい町づくりに努める必要があります。
最近では子育て支援制度や高齢者向けの医療制度を充実させている地域は増えてきているので、そういった地域を参考にしてみるのも良いでしょう。
住民参加型のイベントを開催する
住民参加型のイベントを開催するのも一つの方法です。デジタル化の進展に伴い、お祭りや伝統行事といった地域イベントの数は年々減少傾向にあります。しかし、そんな中でも住民参加型のイベントを企画し、多くの参加者を集めて盛大に開催した地域もいくつかあります。
地域独自の魅力を明らかにし、現在地域にはどんなことが求められているのかをしっかりと分析することで、効果のある地域イベントを開催することは十分可能です。イベントが成功すればシビックプライドを醸成することに直接的につながるので、チャレンジする価値は十分ある施策であるといえます。
具体的な地域創生施策を参考にするのが効果的!
もし本格的にシビックプライドの醸成に着手したいと考えているなら、実際の地域創生施策や地域イベントの事例を参考にするのが効果的です。
別の記事では、実際に成功した町おこしイベントや、注目の地域イベントについて紹介しています。興味のある方はぜひ目を通してみてください。
今注目の町おこし・地域イベント5選!
まとめ
シビックプライドとは何なのかについて、定義や歴史、具体的な施策などの観点から紹介していきました。実際に地域創生施策を行うのであれば、このシビックプライドの形成を目的として活動することは非常に効果的であるといえます。
シビックプライドは醸成させようと思ってすぐに実現できるものではありません。ですが、シビックプライドの考え方をしっかりと理解し、自治体の活動に反映させていくことで、将来的には十分な効果を発揮することは可能であるといえます。
この記事が地方創生実現に向けた一助になれば幸いです!