現在、日本には新規就農者を支援する制度や仕組みが多数用意されています。これから農業を始めようと考えている方は、農業向けの制度を上手く活用することで、より手軽に、よりスムーズに事業を始めることが可能となります。

一方で、新規就農者を対象とする支援制度は非常に多様な種類があり、適切な支援を受けるためには、各種制度についての理解を深めておかなければいけません。

本記事では、農業の開業を検討している方や農業を始めて間もない方に向けて、新規就農を対象とした様々な支援・制度について紹介していきます。

※本記事の内容は2024年7月時点の情報です。

目次

  1. 新規就農を検討している方向けの制度
  2. 新規就農して間もない方向けの制度
  3. その他の就農者向け制度
  4. 積極的に新規就農支援制度を活用しましょう

新規就農を検討している方向けの制度

新しく農業を開業しようと考えている方や、今後農業を始めるかどうか検討している方向けの制度になります。

新規就農者育成総合対策(就農準備資金)

就農希望者を対象に、都道府県ごとに定められた農業大学校や先進農家等の研修機関で研修を受けるための資金を交付する制度です。最長2年間、年間最大150万円まで補助を受けられます。

補助金額 年間最大150万円(最長で2年間受給可能)
受給条件 ・就農予定時の年齢が原則として49歳以下
・独立・自営就農または雇用就農を目指している
・都道府県などによって認定された研修機関でおおむね1年以上(1年につき1200時間以上)研修する
・生活費の支給に関する他の制度と重複受給ではない
・原則、前年の世帯収入が600万円以下
交付主体 ・市町村
※都道府県域の研修期間の場合は都道府県等
※全国教育機関の場合は全国農業委員会ネットワーク機構

新規就農者育成総合対策について

農業インターンシップ制度

農林水産省の補助事業として公益社団法人日本農業法人協会が進めている、新規就農者支援を目的とした事業です。補助金等の支援はありませんが、農業に挑戦するかどうか迷われている方は、一度農業の仕事を体験してみることがおすすめです。

補助金額 ・なし
参加条件 高校生以上(16歳以上)
体験の詳細 ・責任者付き添いのもと、作業を行う
参加費、宿泊費、食費は無料(交通費は自己負担)
※宿泊費、食費、交通費は体験受け入れ先によって変更あり
交付主体 ・公益社団法人日本農業法人協会

農業インターンシップ制度について

新規就農して間もない方向けの制度

新規就農してからの期間が浅く、まだ事業が安定していない方向けの制度です。

新規就農者育成総合対策(経営開始資金)

同じく新規就農者育成総合対策の「就農準備資金」が、就農に必要な技術の習得に要する資金支援だったのに対して、こちらは実際に新たに就農する人に対して、経営の開始に必要な資金の一部を支援する制度です。最長3年間、年間最大150万円まで補助を受けられます。

補助金額 年間最大150万円(最長で3年間受給可能)
受給条件 ・独立・自営就農時の年齢が原則として49歳以下
・独立・自営就農する認定新規就農者である(※1)
経営開始5年後までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画がある
・目標地図または人・農地プランに位置付けられている、もしくは農地中間管理機構から農地を借り受けている(※2)
・原則、前年の世帯収入が600万円以下
交付主体 ・市町村

※1:認定新規就農者:市町村から、効率的かつ安定的な農業経営の担い手となり得ると認められた就農者

※2:人・農地プランや農地中間管理機構の詳細は左記リンクをご覧ください。

新規就農者育成総合対策について

新規就農者に対する無利子資金制度(青年等就農資金)

認定新規就農者を対象に、限度額3,700万円(特認限度額1億円)までを無利子融資、実質無担保・無保証人での条件で貸し付ける制度です。

借入限度額 3,700万円(特認限度額1億円)
対象者 ・新たに農業経営を営もうとする青年等であり、かつ認定新規就農者である
償還期限(うち据置期間) 17年以内(5年以内)
取扱金融期間 ・株式会社日本政策金融公庫
(沖縄県にあっては、沖縄振興開発金融公庫)

青年等就農資金について

新規就農者育成総合対策(経営発展支援事業)

新規就農者の就農後の経営発展を目的とした、機械・施設の購入、販路開拓、新品種の導入といった新しい取り組みを支援する制度。認定新規就農者である必要があります。

補助金額 上限1,000万円
(経営開始資金の交付対象者は上限500万円
受給条件 ・独立・自営就農時の年齢が原則として49歳以下
・独立・自営就農する認定新規就農者である
経営開始5年後までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画がある
・目標地図または人・農地プランに位置付けられている、もしくは農地中間管理機構から農地を借り受けている(※2)
・本人負担分について金融機関から融資を受けている

新規就農者育成総合対策について

強い農業・担い手づくり総合支援交付金

地域における農業の強化・活性化、そして意欲ある農業の担い手の育成を目的とした制度。「産地基幹施設等支援タイプ」と「先進的農業経営確立支援タイプ」と「地域担い手育成支援タイプ」の3種類が用意されており、条件や補助の内容が異なります。

産地基幹施設等支援タイプ ・助成対象:農業用の産地基幹施設(耐用年数5年以上)
・補助率:1/2以内等
・上限額:20億円等
先進的農業経営確立支援タイプ ・助成対象:農業用機械・施設(耐用年数5~20年)
・補助率:融資残額(事業費の3/10以内)等
・上限額:個人1,000万円、法人1,500万円等
地域担い手育成支援タイプ ・助成対象:農業用機械・施設(耐用年数5~20年)
・補助率:融資残額(事業費の3/10以内)等
・上限額:300万円等

強い農業・担い手づくり総合支援交付金について

その他の就農者向け制度

上記以外に、就農者が活用できる制度をご紹介します。

経営所得安定対策

大豆などを栽培する農家の安定的な経営を支援する制度です。こちらも「直接支払交付金」と「米・畑作物の収入減少影響緩和交付金」の2種類が用意されています。

農業経営基盤強化準備金制度

この制度は、農業経営の基盤強化を実現する上での、税制上の特例措置を定めたものになります。交付金を活用する際の税負担を軽減させることができます。

産地生産基盤パワーアップ事業

就農者の収益向上、生産基盤の強化を目指して、就農者に対する金銭的なサポートを行う、農林水産省が進める事業です。高性能な機械・施設の導入や栽培体系の転換等に対して総合的な支援を提供します。

積極的に新規就農支援制度を活用しましょう

今回は、新規就農者を対象とした、就農や経営のサポートを目的とする様々な制度についてご紹介しました。新規就農は決して簡単に行えるものではないため、各種支援制度から適切なものを選択して、取り入れることが非常に大切になります。

本記事が、少しでもみなさんの新規就農の一助になったなら、幸いです!

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