少子高齢化や東京一極集中による人口減少への対策として打ち出された「地方創生」。最近ではIターン・Uターン転職やリモートワークなどが世の中に広まっていることもあり、地方創生に取り組む企業や自治体は増えてきています。
しかし、いざ地方創生に挑戦しようと思っても、何から始めたらよいか分からないという方も多いのではないでしょうか?今回は地方創生において大切なことや成功の秘訣が学べる、3つの代表事例を紹介。地方創生で実際に成功した事例の内容や、地方創生で意識したほうが良いことなどについて解説していきます!
それでは見ていきましょう!
地方創生の事例①:徳島県神山町
徳島県名西郡にある神山町で、「神山プロジェクト」は行われました。山間部に位置する人口5,000人にも満たない田舎町、神山町。ここは「奇跡の町」として、地方創生の分野ではよく知られています。
そんな神山町が成功した秘訣は、以下の3つが挙げられます。
- 地域とアートの融合
- 観光資源がなくても地方創生はできる
- ゴールは「素敵な故郷を作ること」
地域とアートの融合
1999年、神山町で「アーティスト・イン・レジデンス」という企画が行われました。この企画は国内外で活躍する芸術家が現地に滞在し作品を制作するというプロジェクト。自然と人間味で溢れる徳島県神山町に身を置くことで、普段では生み出せないような創造性豊かなアート作品を作り出すことを目指します。
観光資源がなくても地方創生はできる
アーティスト・イン・レジデンスの成功を通して、目立った観光地を持たない地方にも移住のニーズがあると気付いた神山町。その後はコンセプトを「アート」から「ワーク」へと拡大させます。これらの施策によって、移住者や移転企業数を大幅に増加させることに成功しました。
ゴールは「素敵な故郷を作ること」
この一連の取り組みは、後に「神山プロジェクト」と呼ばれるようになりました。神山プロジェクトの最大の成功要因は、人口の増加ではなく素敵な故郷作りを目的としたこと。結果として2011年には転入者が転出者を上回り、神山プロジェクトは現在でも地方創生のモデルケースとして全国で語られるようになりました。
地方創生の事例②:沖縄県久米島町
「高齢化による人口減少に伴う、農作物の売上減少」
「地元で生産された野菜は売れ残ってしまう一方で、地元のホテルは島外から野菜を仕入れてしまっている」
少子高齢化が止まらない日本においては、離島地域の多くがこのような課題を抱えています。
しかし、そんな地域課題を見事に解決したのが、沖縄県から西に100kmほど離れた島に位置する久米島町です。久米島町の成功のポイントは、以下の2つ。
- 地域課題を「IT」で解決
- IT施策の応用で、観光客誘致に貢献
地域課題を「IT」で解決
高齢化に伴う農作物売上の減少、非効率な流通システムによる農作物の大量廃棄。久米島町は自治体主導のもと、これらの課題を「IT」を活用することで解決させました。
久米島町は、地元の農業従事者と地元のホテル・レストランが簡単に取引できるオンラインショップを開設。この施策により、地元で生産された農作物の大量廃棄問題を生み出していた従来の流通手段を簡易化し、それによって農家一戸あたり約4000円/月の農業収入を創出することに成功しました。
IT施策の応用で、観光客誘致に貢献
さらにオンラインショップ開設にあたって整備されたITインフラをスマートフォン向け観光アプリにも活用し、ARを使ったスタンプラリーやオンラインクーポンの配布などを行うことで、観光客誘致にも取り組んでいます。久米島市はITを積極的に取り入れることで、地産地消促進と観光客増加に貢献し、地方創生を実現しました。
地方創生の事例③:岡山県西粟倉村
岡山市から車で2時間ほどの山の中にある、岡山県西粟倉村。環境モデル都市として国からの選抜を受けている西粟倉村は、「百年の森林構想」と呼ばれる地方創生施策を行うことで活性化を実現させた、代表的な成功事例の一つです。
西粟倉村の成功の秘訣は2点です。
- ローカルベンチャーによる、地域資源を活かした新ビジネスを促進
- ベンチャー誘致→事業拡大に伴う雇用増加の好循環をつくる
ローカルベンチャーによる、地域資源を活かした新ビジネスを促進
西粟倉村は面積の約95%が森林であり、さらにそのうちの84%は人工林となっています。林業の盛んな地域でありましたが、高度経済成長期以降の林業の低迷により、その後は長い期間人口の流出に悩まされてきました。
そんな状況を打破するため、2008年に打ち出されたのが「百年の森林構想」。森林の継承を目的として村内で起業する新たな人材を募集したところ、なんと30以上のローカルベンチャーが誕生しました。豊かな資源を活用し、木々を使用した新商品の開発や木材の流通といった事業を展開しています。
ベンチャー誘致→事業拡大に伴う雇用増加の好循環をつくる
西粟倉村はその後も、ローカルベンチャーの持続的な発展を積極的にサポート。移住から創業・事業拡大までの支援を行う外部の専門家を招き入れたり、効率的に木材の流通を行うことができる体制を整えたりといったサポートを行いました。
西粟倉村で新たに事業を起こすベンチャー企業は現在も増加中。課題であった人口減少の克服にも繋がっています。
事例から分析する、地方創生を行う上で必要なこと
最後に、上記3つの事例から考えられる地方創生を成功させるために必要なこと、重要なポイントについてご紹介していきます。
地域資源を活用することにこだわらない
西粟倉村には「森林」という他地域にも誇れる貴重な資源がありました。しかし、それ以外の地域には目立った観光資源・地域資源はありません。それでも今回紹介した3つの事例では、地方創生を実現し、観光客数や移住者数の増加を成功させることができました。
「資源はあくまで地方創生を行う上での一つの材料に過ぎない。特徴的な何かを持っていなくても、地方創生は十分成功させられる」。このことを3つの事例から読み取ることができます。
「人口増加」ではなく「地域課題の克服」に注力する
地域の過疎化を抑えて人口の増加を実現することは、地方創生を行う目的の一つです。今回紹介した地域も、地方創生施策に取り組むことで人口を増やすことができました。
しかし紹介した3つの成功事例には、ある特徴が見られました。それは「より良い地域作りを追求した結果、勝手に人が増えていった」ということ。本当に地域のためになることはなにかを考え、行動することが、結果として地域の人口増加にも繋がります。
移住者を継続的に支援する体制を整える
ビジネスや事業を行う上で最も大切なことは、関わり合うすべての人から「信頼」を得ること。これは地方創生においても同じことがいえます。魅力的な施策を実施することで、一時的に移住者を増やすことはできるかもしれません。ただし、住民からの信頼を獲得し、継続的に移住者を増やすことができなければ「地方創生が成功した」とはいえません。
移住者に自由な生活環境を提供するため、移住後の支援を継続して行う必要があります。
まとめ
いくつかの成功事例に触れたことで、地方創生を成功させるために必要なことをイメージできたと思います。最近はテレワークの普及などの影響もあり、地方への関心や地方創生に対して興味を持つ人が増えてきています。様々な成功事例からヒントを得ながら、これからも地方創生を盛り上げていきましょう!
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