少子高齢化が加速し、地域の持続が困難になってきている地方自治体は増加傾向にあります。この問題の解決策として、出生率の増加や若い移住者の増加に力を入れていこうと考えている自治体担当者の方は多いのではないでしょうか?

本記事では、前提として子育て支援の概要を紹介しつつ、全国の成功した子育て支援の事例を8つ紹介していきます。この記事を読めば、子育て支援にはどんなものがあるのか、そして子育て支援を成功させるために重要なポイントは何かについて知ることができます。

地域の子育て支援施策の実施・改善を検討している方は目を通してみてください。

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目次

  1. そもそも子育て支援ってなに?
  2. 地域の子育て支援の現状と課題
  3. 地方自治体が行う子育て支援の具体事例
  4. まとめ

そもそも子育て支援ってなに?

そもそも子育て支援ってなに?子育て支援の事例を紹介する前に、まずは子育て支援とは何かについて、改めて確認しておきましょう。

内閣府は子育て支援のことを、「幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を進めていくためにつくられた制度」と説明しています。年代が幼児期である子どもを対象とした制度であることが、この説明からわかります。

具体的には、年齢ごとに定めた子育て支援金を給付したり、子どもの医療費を一部もしくは全額免除したり、育児に役立つ情報やイベントを開催したり、などが挙げられ、様々な制度・施策が該当します。

上記の内容を踏まえると、子育て支援をもっとわかりやすく説明するなら「子どもの健全な成育を実現するために、人手や金銭面の援助、情報やサービスを提供すること」と言い表すことができます。

地域の子育て支援の現状と課題

地域の子育て支援の現状と課題現在、子育て支援が上手くいっていない地域は少なからずあります。なぜそのような地域が出てしまっているのでしょうか?まず、日本で子育て支援が注目されるようになった背景について確認していきましょう。

「子育て支援」という制度や考え方が広まったのは、1990年であるといわれています。1990年、日本では1年の合計特殊出生率※が過去最低を更新した「1.57ショック」が起きました。1.57ショックの衝撃により世論からは少子化対策を求める声が急増し、その対策として普及していったのが「子育て支援」なのです。

少子化対策のニーズが高まっていったことにより、父母に向けた幼児教育の指導や子育て支援施設の開設、給付金による援助など、様々な施策が行われました。しかし、新しい子育て施設ができても、車がないから移動できないという人がいたり、そもそも仕事が忙しくて制度を利用できないという人がいたりなど、子供をもつ父母のニーズを的確に捉えることはできませんでした。

日本全国すべての人にとって有益な子育て支援制度を実施するのは極めて難しいと言えますが、子育て支援にうまくいかなかった事例があることは、現在も少子化問題を解決することができていない理由の一つとして考えることができるでしょう。

※合計特殊出生率:15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの(厚生労働省

地方自治体が行う子育て支援の具体事例

上記では子育て支援制度で上手くいかなかった事例があることをご説明しましたが、全ての地域が子育て支援に失敗しているわけではありません。魅力的な子育て支援制度を確立し、住民から高い評価を得ている施策もたくさんあります。

ここからは、全国の地方自治体が行ってきた子育て支援制度の事例を比較して厳選した、8つの子育て支援制度を紹介していきます。

さいたま子育てWeb/埼玉県さいたま市

さいたま子育てWeb

http://www.saitama-kosodate.jp/

「さいたま子育てWeb」は、現在子育てに励んでいる人や、これから子育てを始める人に向けて作られた子育てに関する情報を発信するポータルサイトです。

地域内で開催されるイベントの情報や子育て関連施設の紹介、さらには悩みや疑問を相談できるWeb相談窓口を用意するなど、子育てに取り組むあらゆる人のニーズに対応することを目指したWebサイトとなっています。

子育て関連で気になることは、基本的にこのサイト1つで確認することができます。

養育支援訪問事業/愛媛県松山市

近年、児童の虐待問題を耳にする機会が増えてきました。そんな児童虐待の発生予防を目的として、愛媛県松山市で行われているのが「養育支援訪問事業」。積極的に支援を受けられない家庭を対象に、保健師や保育士等の専門職が自宅を訪問し、高度な養育支援を提供します。

事業にかかる費用は補助金を差し引いて1000万円ほど。高い効果が見込まれるため、予算に余裕がある地域は取り入れることを検討してみてください。

みんなでお祝い輝きバースデー/東京都北区

みんなでお祝い輝きバースデー

https://www.city.kita.tokyo.jp/k-mirai/kosodate/shien/kosodate/iwai.html

「みんなでお祝い輝きバースデー」は、同じ地域で暮らす同じ年代の子どもと一緒に誕生日をお祝いする、心温まる子育て支援イベントです。対象は北区在住の満1歳を迎える子ども。1か月に1度開催され、同じ誕生月の子どもと一緒にイベントを楽しみます。

お子さんが10組ほど集まる月もあるそうで、地域内の交流を促進することにもつながるこのイベントは、北区の子育て支援の成功例といえます。

地域における通学合宿推進事業/静岡県全域

1年生から6年生までの小学生を対象とし、異なる学年の児童が公民館や集会所、高校の生活館などの宿泊可能な施設を利用して共同生活を行い、親元を離れて通学をするという宿泊型の地域イベントです。

子どもに対しては自律性の醸成を、両親にとっては家庭環境を見直すきっかけを提供することを目的として設定。これまでの総参加児童数は57,000人以上、関わった地域住民の数は49,400人以上であり、全県を通して好評だったイベントでした。

令和3年度をもって、コロナウイルスの影響を考慮してイベントは終了してしまいましたが、日帰りの体験活動を内容に含めた「体験寺子屋事業」を新たに開始することが決定しました。

サタパパサロン事業/岐阜県大垣市

サタパパサロン事業

https://www.ogaki-kosodate.net/soshiki/shiencenter/saron/4264.html

岐阜県大垣市では、父親の子育てへの理解向上や子どもと触れ合える場を作ることを目的としたイベント、「サタパパサロン」を開催。母親の負担軽減や積極的に子育てを行う父親を増やすことを目指して実施されています。

「父親の参加」が主な目的であるため、開催日は土曜日、日曜日を設定。子供と一緒にスポーツをしたり、工作や絵本の読み聞かせを楽しんだりなど、親子で交流できるイベントを多数実施しています。

子育て支援というと子どもを対象とした施策を考えてしまいがちですが、家庭や父母に向けた施策を行うことも大切になってきます。

おやじの会支援隊の派遣/香川県全域

「おやじの会」と呼ばれる団体をご存じですか?おやじの会とは、簡単に言えばPTAの父親版。特定の地域に限定された団体ではなく、近年では少しずつ全国的にその数を増やしていっています。

そんなおやじの会の立ち上げ、推進を支援する役割を担っているのが、香川県が取り組んでいる「おやじの会支援隊」の活動です。

おやじの会支援隊のメンバーが運営に悩んでいる団体を直接訪問し、出前講座の形でおやじの会の進行方法を指導するというのが、おやじの会支援隊の主な仕事。全国的に需要が高まっていることから、注目の地域施策といえます。

プレミアム・パスポート事業/石川県全域

プレミアム・パスポート事業

https://www.i-oyacomi.net/prepass/page/prepass.php

子育て支援と聞いて第一に思い浮かぶのは、金銭面での補助だと思います。石川県が実施しているプレミアム・パスポート事業は、そんな金銭面での不安を解消する魅力的な子育て支援事例です。

プレミアム・パスポートとは、18歳未満の子どもが2人以上いる石川県内のご家族を対象に、専用のカードを提示することで協賛企業が提供する様々な特典を得ることができるという制度。飲食店や商業施設でも特典を受けることができるため、親子の交流の機会を増加させることに貢献しました。

板橋区すくすくカード事業/東京都板橋区

最後に紹介するのは、東京都板橋区で行われている「すくすくカード事業」。石川県のプレミアム・パスポートと異なる点は、サービスを受けるために必要となるものが「バウチャー(1回限りの利用券)」であること。

2歳未満の子どもがいる家庭を対象に、「すくすくカード」と呼ばれる利用券を1人6枚配布します。すくすくカードを使用することで、育児支援ヘルパーの派遣や訪問型の産後ケア、ベビースイミングなど、16種類の中から受けたいサービスを無償で受けることができます。

予算が1億円越えの施策であるため実施するのは簡単ではありませんが、地域の子育て支援の充実に貢献した魅力的な施策であるといえます。

まとめ

本記事では子育て支援の概要と、地域の子育て支援の事例8選を紹介していきました。

地域や地方自治体ごとに特徴は違いますし、全国で地域格差が生まれてしまっているのも事実なので、今回紹介した事例をそのまま真似するのは得策ではないでしょう。ですが、成功した子育て支援事例を参考にし、自分の地域と比較したうえで、独自のアレンジを加えた施策を実施することで、高い効果を生み出すことはできるかもしれません。

ぜひ一度、自分の地域ならではの子育て支援施策を考えてみてください。