「コンパクトシティ」という言葉をご存じですか?意味は、名前の通り居住施設や地域サービスが一部の場所にコンパクトにまとまっている地域のことを指します。

しかし上記の説明はややぼんやりとしており、具体的にコンパクトシティがどのようなものなのかを理解できたという人は少ないのではないでしょうか?

本記事では、概要先行事例近年注目されている理由などの観点からコンパクトシティについて詳しく分析していきます。この記事を読めば、コンパクトシティとは何かを詳細にイメージすることができるようになります。

それでは見て行きましょう!

目次

  1. コンパクトシティとは?
  2. なぜコンパクトシティが必要なのか
  3. コンパクトシティのメリット・デメリット
  4. コンパクトシティの取り組み事例
  5. コンパクトシティを成功させるために必要なこと
  6. まとめ

コンパクトシティとは?

コンパクトシティとは?

コンパクトシティの定義や概念は捉え方によって若干異なる場合がありますが、国土交通省は以下の3つの特徴を有した都市構造のことを指すと定義しています。

  • 高密度で近接した開発形態
  • 公共交通機関でつながった市街地
  • 地域のサービスや職場までの移動の容易さ

この定義を簡単にまとめると、「住居・職場・商業施設・その他サービスが都市部に密集しており、公共交通機関を利用することであらゆる場所に短時間で移動をすることができる街」と言い表すことができます。

現在の都市構造について考えてみると、大型商業施設は都市部だけでなく郊外にも作られていることがわかります。イオンがその一例です。また、郊外で生活をする高齢の方が多いため、福祉施設は郊外の様々な地域で作られていることもわかります。

コンパクトシティは、高齢者をはじめとする郊外で生活をする人に対して都市部への移住を推進し、それに伴って各種施設やサービスも都市部へと移転させていくことを目指す取り組みといえるでしょう。

なぜコンパクトシティが必要なのか

なぜコンパクトシティが必要なのかコンパクトシティ化の推進が必要とされている理由は、今後多くの地域を苦しめるであろう「ドーナツ化現象」と「スプロール現象」への対策となり得るという点にあります。

ドーナツ化現象 ある地域の中心地に集まる人口が減少し、反対に郊外の人口が増加してしまう現象
スプロール現象 無計画な都市開発により、インフラ整備や居住環境が十分でないまま虫食い状態に宅地化が進んでいく現象

ドーナツ化現象によって引き起こされる問題としては、広範囲に渡る郊外地域での各種施設やサービスの維持・運営に多額の資金が必要になること。そして住民が様々な地域に分散してしまっているためまとまった税収を得ることが困難になることなどが挙げられます。

スプロール現象によって引き起こされる問題は、地域の維持にかかる自治体の負担増加自然環境の破壊などがあります。たとえ居住者がいなくても自治体は地域サービスや施設を維持しなければならず、そこに予算を浪費してしまうことになるからです。

上記2点の社会問題が重なることによって、将来的に財政破綻してしまう可能性のある地域が増えてきているのです。

コンパクトシティのメリット・デメリット

様々な社会問題の解決策となり得る、コンパクトシティ化の取り組み。この施策にはメリットが多いですが、デメリットもあります。

代表的なメリットは、「地域内活動の利便性が向上し、それに伴い経済の活性化が実現されること」です。居住施設や商業施設といったあらゆるものが都市部に密集する形となるため、「ここに行ったついでに、あそこにも行ってみよう」のように一度の外出で複数の施設を横断する可能性が高くなります。外出先が増えれば、その分住民がお金を使う機会も多くなり、経済の好循環に繋がっていきます。

また、住民が一部に集まっているため、高齢者に向けた公共交通機関の手配や介護サービス等も広範囲に提供する必要がなく、自治体の支出を抑えることも可能となります。

デメリットとしては、都市部での生活は郊外での生活よりも費用が掛かってしまうため、多くの住民の負担を増加させてしまう恐れがあるといった点が挙げられます。そもそも土地の価格が都市部の方が高く設定されているため、都市部へと移住したことによって支出に苦しんでしまう家庭は多くなるでしょう。

このデメリットを解消するためには、以下で紹介する成功事例を参考にしながら、住民への各種サポート体制を整備し、支援していくことが大切になっていきます。

コンパクトシティの取り組み事例

コンパクトシティの取り組み事例様々な社会問題の解決策となり得るコンパクトシティ化の取り組みですが、実は成功している地域よりも失敗している地域の方が多いという現状があります。ここでは失敗事例を含めたいくつかの事例を紹介していきます。

失敗事例①:青森県青森市

コンパクトシティの失敗事例としてよく取り上げられるのが、青森県青森市。当時財政の急激な悪化下水道整備大雪による除雪問題などの地域課題に悩まされていた青森市は、1999年、「青森市都市計画マスタープラン」にコンパクトシティ化構想を盛り込みました。

そして 2001年、コンパクトシティ化に向けて駅前再開発に着手していた青森市は、複合商業施設『アウガ』を駅前に開業。当時の日本にはコンパクトシティ化を推進している地域はほとんどなかったため、コンパクトシティの象徴ともいえるアウガには、地元住民だけでなく全国からも観光客が殺到しました。

順調な滑り出しに成功したアウガでしたが、その栄光は長くは続きませんでした。初年度は年間600万人の来場者を記録した一方で、利益を見てみると約2億5000万円の大赤字。その後も赤字の流れを止めることができなかったアウガは、2017年に惜しくも閉店することになりました。

失敗事例②:秋田県秋田市

秋田県秋田市の施策も、コンパクトシティの失敗例として取り上げられることが多いです。秋田市も同じく、大型商業施設『エリアなかいち』を活用した施策に着手しました。

エリアなかいちは、2012年に135億円の総工費をかけて建設されました。ここには店舗のほかに美術館が用意されており、さらには人が暮らすことができる住宅棟も作られました。

他にはない魅力の詰まった商業施設であるエリアなかいちでしたが、思うような業績を上げることができず、2年後の2014年に中核の商業テナントである「サン・マルシェ」が撤退を表明。それに続くように他のテナントも続々と撤退を繰り返していったことにより、エリアなかいちの運営会社の社長や役員ら計7名が辞任をしてしまうという事態となってしまいました。

その後の経営改善で何とか持ち直すことができ、閉店するまでには至りませんでしたが、秋田市のコンパクトシティ化構想は失敗に終わりました。

成功事例①:富山県富山市

最後に紹介するのは、富山県富山市の成功事例です。富山市が行った取り組みは、コンパクトシティの代表的な成功例として多くの場所で取り上げられる有名な事例です。

富山市の特徴は「自動車依存度の高い町」。世帯あたりの乗用車保有台数が全国トップクラスで、住民の8割以上が通勤に車を使用していることから、公共交通機関の衰退市内中心部の低密度化が問題視されていました。

そこで富山市は、路面電車を新たに用意し、廃線となる予定だったJR富山港線を活用して路面電車を使って移動ができる仕組みを整備しました。利便性の高さから路面電車を利用する住民は瞬く間に増加し、市内経済の活性化に貢献しました。

さらに、市内中心部や公共交通沿線地区に対する住宅助成制度を設定したことで、郊外からの移住者数を増加させることにも成功し、コンパクトシティの本質的な目標の実現にも大きく繋がりました。

コンパクトシティを成功させるために必要なこと

上記では青森市、秋田市の取り組みを失敗事例として取り上げました。しかし、これらの取り組みが全く無意味なものであったかというとそうではありません。秋田市のエリアなかいちは現在でも商業施設や美術館として観光客を集めていますし、青森市のアウガは現在市役所の機能を有しており、地域にとって欠かせない存在となっています。

では、コンパクトシティを成功させるためには何が必要だったのでしょうか?3つの事例から考えられることは、地域内部及び外部の現状と課題をしっかりと把握し、適切な施策を投じることです。

富山市は、地域住民の自動車依存度の高さに着目し、今後高齢化が進み多くの人が自動車を運転できなくなってしまったときの状況を課題としてとらえ、その解決策となる最適なアプローチを行いました。現状分析や課題分析をしっかりと行うのは当たり前のことではありますが、改めて意識して取り組む必要があるといえます。

まとめ

まとめ本記事ではコンパクトシティの概要や注目されている理由、実際に行われた事例などについて紹介していきました。社会問題が深刻化しつつある今、この取り組みは価値のある地域施策の一つであるといえます。

失敗してしまった地域もいくつか紹介しましたが、地域内部の課題と地域を取り巻く外部環境について分析し、適切な施策を行うことで、コンパクトシティを実現することは十分可能です。より豊かな地域社会を築いていくためにも、コンパクトシティ化は重要になるでしょう。