近年、都市化や少子化などの影響で、使われなくなった学校施設「廃校」が増加しています。ここ数年は、毎年約500校もの学校が廃校に至っており、こうした状況に、廃校を活用しようという動きが全国で広がってきています。

ここでは、なぜ使われなくなったはずの廃校が活用されるようになったのか。廃校を活用するメリットをはじめ、活用事例集、廃校活用の注意点をご紹介します!

目次

  1. 廃校活用の現状
  2. 自治体が廃校を活用するメリット
  3. 事業者が廃校を活用するメリット
  4. 廃校を活用する際の注意点
  5. 廃校活用事例
  6. 「〜未来につなごう〜みんなの廃校プロジェクト」が始動中
  7. まとめ

廃校活用の現状

文部科学省が行った「廃校施設等活用 状況実態調査」によると、平成30年の時点で、平成14年度から平成29年度に発生した廃校で施設が現存している6,580校のうち、74.5%の4,905校社会教育施設や社会体育施設等の公共施設のほか、体験交流施設や福祉施設など様々な用途で活用されていることが分かります。また近年は、自治体と事業者が連携して、複合施設や美術館など地域経済活性化に繋がるような活用事例が増加しています。

出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/yoyuu_00002.htm

自治体が廃校を活用するメリット

廃校を活用するメリットは、廃校を売却する自治体廃校を購入する事業者の2つの視点から考えることができます!まずは、自治体の視点からメリットをご紹介します!

話題性が高い

近年、社会問題の1つである廃校の活用は、多くの人から注目を集めています。また最近は、ユニークな廃校活用事例も多く、メディアSNSに取り上げられる機会が多いです。このように話題性の高い廃校の活用は、街を知ってもらう街を訪れてもらうきっかけづくりにすることができます!

地域の雇用創出に繋がる

廃校を新しい形で運営していくことで、地域に新しい雇用を生み出すことができます。近年、「地方には就職先がない」という考えから東京への転出を考える方が多いですが、廃校を活用して雇用創出を行うことで地域からの転出抑制に繋げることができます。

維持管理費を補う使用料を入手できる

廃校は解体するのに多額の費用がかかりますが、維持・管理するのにも年間200万円程かかります。そのため、経済効果を望める活用をしていく方が地方財政の歳出を抑えることができます。

事業者が廃校を活用するメリット

次に、事業者の視点から廃校を活用するメリットをご紹介します!

初期費用が安く済む

廃校を活用する事業者の一番のメリットは、初期費用が安く抑えられる点にあります。建物が完備されているため、同規模建物を新築するよりも安く新規事業を始めることができます。実際に廃校を活用したことで、同規模建物を新築する場合にかかる経費よりも6,000万円安く事業を開始できた事例があります。

使い勝手が良い

元々学校は、グラウンドや体育館、教室の仕切られた空間があるため非常に使いやすいです。また、電気やガス、上下水道、通信設備、 保安設備なども標準化されており、耐震化やバリアフリー化などの安全面についても多くの施設が一定の基準を満たしています。そのため、建物を1から建設するよりも時間を短縮することができます。

地域密着型が可能

近年、地域に寄り添ったサービス展開をしたいと考える地域密着型企業が増えてきています。学校は、地域のシンボルであり非常に親しみやすいことから、地域密着型の経営を考える事業者には最適な施設であるといえます!

高い宣伝効果

先述の通り、廃校の活用は話題性が高いです。そのため、高い宣伝費用をかけずとも地域住民との協議や改装工事、風の噂話などを通じて地域住民に知ってもらうことができます。

高い社会的貢献度

今や地域のみならず、社会問題の1つである廃校の活用は社会に貢献しているといえます。地域のシンボルであった学校を再生し、地域貢献することは、廃校の活用に関わる全ての人々の社会的意義を高めることに繋がります。

廃校を活用する際の注意点

廃校を活用するのにはたくさんのメリットがありますが、注意点もいくつかあります。以下の注意点に気をつけて、廃校の活用を行いましょう。

経営設定が困難

廃校は、元々地域資源であることから予算の確保や財源確保、設備及び管理条例の制定が困難です。また、活用法によっては前例がないことから年間目標来館者数の設定が立てづらいです。

慎重な協議が必要

元々、廃校は地域資源の1つであるため、活用する際は地域住民のニーズを汲んだ活用が求められます。特に、地域に何の縁もない事業者が突如現れたとしたら地域住民は警戒します。そのため、廃校を活用して新規事業を始める際は、地元住民の意向の確認や協力を得るために、地域住民との信頼関係を築いていく協議が必要になります。

厳しい条件がある

ほとんどの廃校舎は補助金が充てられた施設であるため、補助金の返還が必要です。そのほか、転用する場合の条件(制限)があったりと、専門的な知識が必要になってきます。

廃校の活用にも限界がある

一般的な公共施設の建替え期が築 60 年後であることから、廃校の活用にも限界があります。また、廃校の状態によっては、大規模改修や老朽化部分の修繕など、多額の費用が必要な場合があります。特に、耐震基準を満たしていない廃校を活用する場合は膨大な費用がかかってしまいます。

活用後が重要

廃校は、ただ活用すればいいということではありません。活用後に、補助金や税金に頼らずに、自律的な収益を挙げられるのかが重要です。大切な地域資源の1つを活用するということは、生半可な気持ちでできることではありません。

廃校活用事例

むろと海の学校【高知県室戸市】

出典:https://www.city.muroto.kochi.jp/pages/page0343.php

むろと海の学校は、2006年3月に廃校となった旧椎名小学校を改修し、ミニ水族館として再利用した施設です。室戸の水域で生息し、獲れる海水生物の飼育・展示・研究が行われています。飼育魚類やウミガメへの餌やりや測定体験など、観るだけでなく海洋生物と触れ合える水族館として運営されており、子どもから大人まで幅広い年齢層に親しまれています。

太陽の森ディマシオ美術館【北海道新冠町】

出典:https://dimaccio-museum.jp/

太陽の森ディマシオ美術館は、廃校を再生して2010年にオープンした美術館です。理事長を務める谷本勲さんが、新冠町開拓者の「この小学校をなんとか再生してほしい」という熱意に胸を打たれて廃校を購入したところから始まりました。美術館には、世界最大の油彩画を描いたディマシオの作品が200点以上、ルネラリック作品150点以上が並んでおり、廃校は年間2万人の来場者数を集める美術館に生まれ変わりました。

大田口テラス【高知県大豊市】

大田口小学校校舎は、1985年に新築された三階建ての校舎ですが、少子化を背景に2015年に廃校しました。しかし、2018年からは「コミュニティースペースと住宅を併せ持つ施設へのリノベーション」として新しい形で運営されています。

1階にある2教室分を放課後子ども用スペース、家庭科室を特定非営利活動法人の活動拠点として改修されています。2,3階部分は、元の教室の広さに合わせて家族向け住宅2戸単身世帯向け8戸の計10戸分の賃貸住宅に改修されました。また、グラウンドの一部は賃貸住宅の入居者用駐車場及び施設利用者向けの駐車場にして、暮らしやすさにも注力した設計がされています。

のじまスコーラ【兵庫県淡路島】

出典:https://nojima-scuola.com/aboutus/

のじまスコーラは、廃校となった野島小学校を改装した複合施設です。施設内では、地元で採れた野菜や焼きたてのパンを販売するマルシェやカフェ、レストラン、動物園が完備されています。旧校舎の雰囲気を残したまま改装されたのじまスコーラは、地域活性化のシンボルとして、地元住民から観光客まで多くの人に愛される人気スポットです!

酒蔵【熊本県菊池市】

2013年に廃校となった旧水源小学校は、 現在は酒蔵として使用されています。元の給食室は洗った米を甑(こしき)で蒸す場所に、校長室と保健室は麹室(こうじむろ)に、職員室は床を取り払ってタンクが並ぶ発酵室に改修されています。酒蔵は、同規模建物などを新築する場合にかかる経費が約3億1千万円だったところ、改修費用を約2億5千万円に抑えて事業を開始することができました。

青少年宿泊施設【やまびこ荘】

出典:https://ikoyo-nishiizu.jp/yamabiko/

やまびこ荘は、「廃校になった大沢里(おおそうり)小学校を残してほしい」と言う地元住民の声によって青少年宿泊施設として生まれ変わった施設です。ほとんど内装は変えずに、小学校時代の面影を残した内装が人気を呼び、日帰り客を含めた年間来場者数は平成28~30年で7,000人~8,000人に上りました。青少年の合宿をはじめ、会社の研修や一般の宿泊施設としても使用できます。

「〜未来につなごう〜みんなの廃校プロジェクト」が始動中

出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1296809.htm

「廃校を活用したい」と考えても、地方自治体と活用事業所が繋がる機会が乏しいことが課題の1つとして挙げられていました。そこで、文部科学省は平成22年から「〜未来につなごう〜みんなの廃校プロジェクト」の一環として全国の廃校に関する情報を集約し、地方公共団体と活用を希望する団体・事業者とのマッチングを行っています。

具体的には、このプロジェクトでは”未活用の廃校を有しており、活用先を公募したい地方公共団体”が、校舎等の詳細情報や譲渡条件、担当窓口等を提示し、それらの情報が文部科学省の運営するホームページに掲載されます。そして、”掲載された情報に興味のある事業者等”が、担当の窓口に直接連絡を取り、諸条件について交渉を行うという形式となっています。

廃校の活用をお考えの方は、是非参考にしてみてください。
廃校プロジェクトの詳細はこちら

まとめ

ここまで、廃校を活用するメリットから廃校活用の事例、注意点を紹介しました!今後も日本では、人口減少や少子化等を背景に廃校施設数は増加していくことが予測されます。しかし、そこで重要なのは地域住民の想いが詰まった学校を「ただ取り壊すのではなく、どのように活用していくか」です!

是非、廃校の活用をお考えの方は参考にしてみてください!